私たちの目指す精神医療

当科は地域の基幹施設として、すべての精神疾患を診療しています。脳科学的要因、心理的要因、社会的要因をバランスよく考慮した、 児童期より老年期にいたるまでの幅広い診療を行っています。西日本の国立大学法人で最初に精神科作業療法・デイケアを導入して、 初期治療から社会復帰まで含めた総合的診療ができる体制を確立している全国的にも数少ない施設です。スタッフには精神科医以外に、 臨床心理士、作業療法士もおり、精神科医療に大切なチーム医療を実践しています。

こころの病気について

うつ病は、気分の落ち込みが長く、強く続き、体の症状(食欲不振、不眠、倦怠感など)が出たり、考えがまとまらなくなったりする病気です。 心理的なストレスが発症のきっかけになることがありますが、決して心の弱さが原因ではありません。脳神経の伝達がうまくいかなくなることが原因と考えられています。医師に相談し、適切な治療を受ければ治すことができる病気です。 うつ病でみられる症状には以下のようなものがあります。 精神症状:憂うつな気分になる、理由もなく悲しくなる、不安や焦り、イライラを感じる、死にたいと考える、何をするのもおっくうになる、集中力がなくなる、人と会ったり話したりするのが面倒になる、趣味もやる気が起きない。 身体症状:不眠、食欲不振、疲労感・倦怠感、めまい、耳鳴り、肩こり、胃やのどの不快感、下痢・便秘など。 これらの症状が、1日の中で時間とともに変化する(日内変動)ことも、うつ病の特徴です。朝が最もつらく、夕方にましになる方がよくいます。 治療の基本は、休養、薬物療法、精神療法の3つです。私たちは、これらを組み合わせ、早期回復を目指します。

統合失調症は青年期にあらわれることが多い精神疾患です。 症状や経過は多様ですが、以下のように分けることができます。 陽性症状:幻聴(誰かの声で噂をされている)や妄想(見張られている)といった今まで体験したことがないような症状 陰性症状:意欲がなくなり、感情の起伏が少なくなるような今までの元気さが無くなっているような症状 認知機能障害:作業を記憶して臨機応変にこなすことがうまくできなくなったり、 言いたいことを頭の中でうまくまとめて喋ることが難しくなったりといった今まで可能だったことができなくなる症状 発症後はできるだけ早く治療を始めることが大切です。発症初期の治療は薬物療法を主体に行います。 これにより幻覚や妄想が改善します。薬がよく効くことから、統合失調症の原因は脳の神経伝達の変化だと考えられています。 私たちは適切な薬物療法を行い、早期回復を目指しています。 発症してからの生活の質(QOL)は、陽性症状よりも陰性症状や認知機能障害の影響を受けます。学業や仕事に復帰するために、 精神科的リハビリテーションが有効です。私たちは、デイケアや作業療法で社会復帰をサポートしています。

広汎性発達障害とは脳神経の変化を基盤にしていると考えられている精神疾患です。多くは3歳頃までに明らかになります。 広汎性発達障害のなかで最も多い自閉症は、特徴的な行動パターンで診断されます。活動や興味が限局していること、意思伝達がうまくできないこと、感情の交流がうまくできないことといった特徴です。 このような特徴を持つ子ども達が同じ経過をとるわけではありません。 知的機能が比較的高い群では、言葉の障害が少なく、成長につれて社会機能が改善していく場合もあります。 自閉症の核となる症状を特異的に改善する治療法はありません。社会的に許容されるような行動を促進し、問題視されるような行動を減少させることが治療目標となります。 当科では、診断と評価を行い、必要があれば、薬物療法や行動の学習を行う治療を行っています。

注意がそれやすかったり、同じ年の子どもよりもひどく落ち着きがなかったりという行動が特徴です。小学校や家庭で穏やかに過ごすことができないために学業や友人関係、自尊心に障害をもたらす程になると、治療が必要となります。 衝動を自分で制御することを覚えるために、親や学校の先生に対応を工夫してもらうことが最初に行われます。それだけでは解決できないときに薬物療法が有効な場合があります。 薬物療法で注意が改善すると、これまで、あまり効果の無かった生活指導や環境整備が効果をあらわすこともあります。当科では外来治療を中心に多方面のアプローチで児の発達をサポートしています。

体重・体型や食事の量・内容にこだわり、食事をとろうとしなくなったり、反対にたくさん食べてしまったりと食事を制御できなくなる障害です。 体型が気になる思春期の女児に多くみられ、近年患者数は増加しています。 極度の低栄養は生命の危険を伴います。入院治療が必要になる症例では、栄養サポートチームの協力のもと身体管理を行い、再栄養に伴う合併症(リフィーディング症候群)の発生を抑えています。 再栄養と並行し、自分らしい生活を取り戻すことを目標にして、薬物療法や精神療法を行います。当院では、ロンドンのモーズレイ病院において長年用いられてきた認知行動療法を基にしたアプローチを参考にしています。 日本の患者さんに向く方法を探しながら、回復へ向かうサポートをしています。

記憶力や判断力が低下し、これまでできていた生活がおくれなくなる状態です。原因となる疾患は様々です。脳や身体の病気をもとに認知症をきたすことも多いので、心配なときには早めに医師に相談してください。 当科では問診や身体診察をもとに、血液検査、脳MRIなどを組み合わせて、原因疾患を調べています。 身体の病気で一時的に認知症の症状が出ていた場合は、その病気の治療を行います。 残念ながら原因が分かっても現段階では治療できない病気もあります。このような場合にも、残された身体的、精神的機能をなるべく活用し、生活がうまくいくことを目標として診療をします。